クレーム関連

食品異物混入クレームの炎上対策や対応を解説

2023年03月29日

読了時間目安: 7分


「食品異物混入クレームの炎上対策がわからない」や「食品異物混入クレームの対応はどうすればいい?」と頭を悩ます企業担当者は多いのではないでしょうか。昨今、SNSが普及して以降、ツイッターなどを中心にして食品異物混入クレームが身近な問題になっています。食品異物混入クレームは、食品を扱う企業としては思わぬ炎上や風評被害につながったり、不買運動、さらには社会的な騒動に発展する可能性があることから、リスク管理のひとつとして対応が求められます。そこでこの記事では、食品異物混入クレームの炎上対策をはじめ、クレームが起きるパターン、さらには対応方法などについて、企業担当者が知っておきたいことをわかりやすく解説します。

食品異物混入クレームとは

食品異物混入クレームとは、消費者に提供する食料品内に何かしらの異物が混入し、消費者が企業や福祉保健局をはじめとする公的機関に報告および苦情を入れることです。

これまでは企業が設置する問い合わせ窓口(Eメール、電話、郵便など)を通じたクレームが一般的でしたが、SNSが普及して以降は、企業に直接クレームするよりも、SNS上で不特定多数の人に向けて被害をアピールするスタイルが主流になりつつあります。

この結果、企業が異物混入の事象を把握するよりも先にインターネット上で炎上することもあり、食品を扱う企業にとって「いつ、どこで」食品異物混入クレームが発生するか把握しづらい状況になっています。

加えて、SNS上で食品異物混入を捏造したり、面白半分でクレームを発信したりする「愉快犯」が演出するようなケースもあり、企業にとって思わぬ炎上被害や風評被害に遭いやすい要因のひとつでもあります。

これまでも、食品を扱う企業にとって異物混入は絶対に回避しなければならないことでしたが、昨今は「事実とは異なる可能性がある異物混入情報」が、急速なスピードで広まり風評被害や経済的な損害を受けるケースもあるため、あらかじめクレーム対応の対策を講じる必要性が高まっています。

食品異物混入クレームは今までも存在していた問題ではありますが、拡散の影響が大きいSNSなどにより「起こりやすく、広まりやすい問題」に変化しています。

食品異物混入クレームの事例

食品異物混入クレームには主に以下のような種類があります。

  • ・動物性異物混入
  • ・鉱物性異物混入
  • ・植物性異物混入
    上記それぞれについて、実際に起きた事例と一緒に紹介します。

【動物性異物混入】

食品異物混入クレームのなかで最も多いとされるのが「動物性異物混入」です。具体的には、虫や虫の死骸、動物の毛、さらにはヒトの毛髪などが該当します。

2014年、即席ラーメンやスナック麺の製造販売をおこなっている食品メーカーが、同社が販売製造している主力商品の内に虫が混入していたという苦情を受け、商品の自主回収および販売中止の対応を取りました。

この一件が発覚したのは消費者による画像付きのツイッター投稿です。同社は初期対応として「製造工程での混入は考えられない」と主張したものの、企業側の隠蔽や過失の可能性が否定できないといった報道により、販売中止にまで追い込まれるかたちになりました。

一方、調査の結果により企業側に過失があることが判明した後は、説明と謝罪、包装の改善、さらには社長自ら小売店へお詫び行脚に出向くことで信頼回復(一時、売上が倍化)に努めました。

この異物混入クレームは、企業の対応(否定から一転し非を認め、信頼回復に努めた)によって炎上被害の影響が大きく左右されることを象徴した出来事として広く知られています。

【鉱物性異物混入】

食品異物混入クレームでよく起きるもののひとつが「鉱物性異物混入」です。このケースでは、金属片やプラスチック片、繊維、合成樹脂などといった製造工程上で混入しやすいものが該当します。

2016年、ベビーフードを製造販売する食品メーカーが、製品内に青色のポリエチレン樹脂片が混入していたことを発表し、対象となる商品60,000点を自主回収しました。

この一件は消費者がツイッターに投稿したことで発覚しましたが、企業側が小売店や消費者の責任と主張し、非を認めない対応をとったことで、同様の被害に遭った人たちが連鎖的にツイッター上でクレームを公表する事態に発展しました。

この結果、複数の異物混入クレームが公になり、なおかつ企業側の対応に不信感を持った人たちが不買運動などを起こし、ベビーフードを利用する人たちの間で炎上する結果になっています。

この異物混入クレームでは、企業側が非を認めないでいると炎上(他のクレームまで表面化する)し、不買運動やブランドイメージの低下にもつながることが証明されました。

【植物性異物混入】

食品異物混入クレームのなかには「植物性異物混入」もあります。具体的には、カビ、紙屑、木片、もみがらといった食さない植物や微生物が該当します。

2022年、食品宅配サービスを利用して届けられた居酒屋チェーン店が提供するとろサーモン丼にカビが混入していたことが発覚し、同社は保健所の立入検査を受け、謝罪する事態になりました。

この一件もツイッターによる投稿がきっかけとなり、利用者が増加傾向にある食品の宅配サービスで起きたことや、保健所が対応する事態にまで発展したため話題になりました。

結局、保健所の検査を受けてもカビが混入した経緯は判明せず、クレームに対して企業は破棄の指示しかしなかったことなどが炎上を招く結果になりました。

この異物混入クレームでは、消費者にとって企業の初期対応が不誠実に映った結果、大きな社会問題にまで発展しています。



食品異物混入クレームが起きるパターン

食品異物混入クレームは以下ふたつのパターンがあります。

  • ・SNS投稿
  • ・企業への問い合わせ

【SNS投稿】

食品異物混入クレームが起きるパターンとして「SNS投稿」が主流になりつつあります。とりわけ、ツイッターやインスタグラム等に画像付きで投稿されることが多く、なかには広く拡散することを目的にした「拡散希望」といった文言やハッシュタグを添えた投稿も見られます。

SNSを通じたクレームは、発信者と同様の被害を受けた人をはじめ、被害に同情する人、さらには炎上を楽しむ人、テレビなどのマスコミが集合体となり、一気に炎上してしまう可能性があります。

企業にとっては、24時間365日、いつでもクレームが起きる可能性があることから、炎上対策としてSNS上の監視が求められます。

【企業への問い合わせ】

食品異物混入クレームが起きるパターンには、企業があらかじめ設けている問い合わせ窓口も含まれます。

このパターンはインターネットやSNSを介さないで済むことが多いため、炎上につながる可能性は少ないとされています。

一方、昨今の主流であるEメールでのクレームは「形に残るやり取り」であることから、不誠実な対応の場合は、スクリーンショットがSNSに投稿されてしまい、炎上を招く可能性が否定できません。

上記いずれのパターンにおいても「炎上する可能性は不可避」ということが分かります。

食品異物混入クレームの対応方法

食品異物混入クレームの対応方法は主に以下の方法を検討しましょう。

  • ・SNSの監視
  • ・食品異物混入クレーム対応マニュアルの作成
  • ・食品異物混入クレームに関する社員教育

上記それぞれの対応方法について解説します。

【SNSの監視】

食品異物混入クレームの対応方法として欠かせないのが「SNSの監視」です。昨今のクレームとして、企業に直接訴えかけず、ツイッターをはじめとするSNSで不特定多数の人に発信することが起点になっているケースが増えています。

SNSで自社商品に対するクレームが投稿されていないかどうかをしっかり把握していれば、炎上する前の段階で対応をとることが可能になります。

SNSの監視は「炎上の未然防止」の意味合いが強い対応方法と言え、一件のクレームに「尾ひれ」が付いて拡散される前に対処できるため企業にとって有効な対策方法です。

【食品異物混入クレーム対応マニュアルの作成】

食品異物混入クレームの対応方法として「食品異物混入クレーム対応マニュアルの作成」も不可欠です。

具体的には、責任者や対応部署の選定、発覚後の対応の流れ、返金や返品条件の設定、マスコミ対応など多岐に及びます。

同時に、事実確認の方法や、ユーザーに連絡をとる手段やタイミングなどもあらかじめ決めておくとよいでしょう。

過去の事例を参考にすると、発覚直後から企業側に責任はないという主張をすると逆効果になることが分かっています。

クレームに対応する現場または担当者の判断だけに委ねることは炎上を招くかもしれないため、あらかじめ対応マニュアルを決めておくようにしましょう。

【食品異物混入クレームに関する社員教育】

食品異物混入クレームの対応として「食品異物混入クレームに関する社員教育」も重要です。例えば、クレームの過去事例の共有や、クレーム対応の失敗例、信頼回復に成功した事例などについて勉強会を開くことが有効です。

とくに、クレーム対応の経験が浅い社員を担当にする場合や、クレーム対応窓口を外部に委託しているような場合は教育制度が大きな意味を持ちます。

クレーム対応を外部委託する場合、委託先に責任感や誠実さを持って対応してもらうように、自社の社員が委託先に積極的に働きかける必要があります。 

 

そのためにも自社の社員には、クレーム対応の責任の重要性や向き合い方といった教育を徹底しておくことが大切です。 

まとめ

食品異物混入クレームは食品を扱う企業にとって炎上を招くリスクのひとつと言えます。食品の異物混入は消費者の健康被害を誘発する可能性があるだけでなく、ネット炎上により企業の信頼失墜に発展する可能性も含んでいます。

食品異物混入クレームは起きないように対策することも当然重要ですが、起きた後の対応についても入念に備えておくことが求められます。