誤爆・情報漏洩

企業の情報がSNSから漏れた事例。情報漏洩の原因と具体的対策

2023年06月30日

読了時間目安: 7分


SNSが日常生活に深く浸透する中、企業も積極的にこれらのプラットフォームを活用しています。しかし、同時に、情報の漏洩や誤った情報の拡散など、新たなリスクも出現しました。
本記事では、企業がSNSを通じて情報漏洩に遭った具体的な事例をご紹介し、その原因と対策について詳しく解説します。

SNSと情報漏洩のリスク

SNSは私たちのコミュニケーションツールとして欠かせない存在となりましたが、その便利さと同時に、情報漏洩のリスクも増大しています。 企業の機密情報、パーソナルデータ、または重要なビジネス情報がSNSを通じて漏れると、その結果は深刻です。以下、世界的企業に起こった実際の事例、原因、その後の対策をご紹介します。
HMV: 
2013年、英国の音楽・映画小売業者HMVでは、レイオフ(解雇)に直面した従業員が、公式のTwitterアカウントからリアルタイムで解雇プロセスをツイートしました。このツイートは、会社の公式声明よりも早く情報を公にし、HMVにとって予期しない形で情報が流出する結果となりました。
【原因】従業員の機密情報への意識の低さ
【その後の対策】ブランドへの影響を最小限に抑えるために、公式声明を出し、謝罪。情報漏洩後、HMVはアクセス管理の強化、ソーシャルメディアポリシーの見直しと教育、危機管理プランの確立、レピュテーションマネジメントの強化を行いました。

テスラ 2018年、自動車製造企業テスラの従業員がTwitterに機密情報を投稿しました。これにより、企業の秘密が一般に公開され、テスラの株価に影響を及ぼしました。
【原因】従業員による機密情報の不適切な公開
【その後の対策】事件後、テスラは社内のセキュリティガイドラインを見直し、従業員教育を強化しました。また、社員がSNSを通じて公開できる情報の範囲を明確に定め、遵守を強く求める体制を整えました。

US Army: 
アメリカ陸軍の兵士が、モバイルアプリStravaを利用して自身の運動経路を共有した結果、秘密基地の位置が暴露される事態が発生しました。この事件は、SNSの個人利用による情報漏洩の危険性を示しています。
【原因】個人のSNS利用による情報漏洩
【その後の対策】この事例を教訓に、アメリカ陸軍は兵士たちへのSNS利用のガイドラインを強化し、個人の行動が軍の安全にどのように影響を与えるかを教育しました。

Facebook: 
2018年には、Facebookが大規模な個人情報漏洩事件に見舞われました。これにより、世界中の約8700万人のユーザー情報が第三者に流出し、その大部分が政治広告会社に利用されました。FacebookはFTCとの和解により、約500億円の罰金を支払うこととなり、その代償も大変大きなものでした。
【原因】第三者アプリケーションへの過度な情報アクセス許可
【その後の対策】事件後、Facebookはユーザーデータの管理を強化し、第三者アプリへの情報アクセス許可を厳格に制限しました。また、ユーザーに対するプライバシー設定の説明を強化し、個人情報保護の取り組みを強化しました。

これらの事例は、企業がSNSを安全に利用するためには、適切なセキュリティ対策と情報管理が必要であることを示しています。情報の取り扱いには十分な注意が必要であり、これには企業全体の理解と協力が求められます。

SNSを通じた情報漏洩事例(日本の企業での実例)

SNSを利用したマーケティングは企業にとって顧客獲得のための重要なツールになっています。特に、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムなどを利用する企業は多いですが、その拡散力から時に大きな被害を生み出してしまうこともあります。

以下に、日本の企業で起こった具体的な情報漏洩事例をいくつか紹介します。

X(旧Twitter)を通じた情報漏洩事例

プロスポーツチーム
【事例】プロスポーツチームに所属する選手が試合当日のメンバーの一部を発表前にTwitterで投稿。
【漏洩後】重大な事故と捉え、早急に関係者への謝罪を行い、役員会での本人への罰則を検討し、内容は未公表ながら再発防止策を講じることを約束。

大手菓子メーカー
【事例】女子高生が従業員の家族から聞いたCMに出演する芸能人の情報をTwitterで投稿。CMが流れる前の大々的な情報漏洩になった。
【漏洩後】大きな実害はないと判断し、予定通りCMを放映。公表はされていないが、社内の情報漏洩に対する意識強化を図ったと思われる。

ホテル:
【事例】ホテルアルバイト店員が有名スポーツ選手と女性タレントがプライベートで来店していたことをTwitterで投稿。Twitter上で話題になり、拡散。
【漏洩後】アルバイト店員に対しては厳しい処分を下すと発表。従業員は社員、アルバイトにかかわらず入社時に顧客情報の守秘義務などについて研修を受け、誓約書に署名させていた。内容は未公表ながら再発防止策を講じることを約束するに至る。

大手スポーツメーカー
【事例】大手スポーツメーカーの店舗で、従業員が自社の契約選手の来店情報を個人のTwitterに書き込み。内容も中傷を含むもので、スポーツメーカーへ多数の非難が殺到。
【漏洩後】スポーツメーカー店から選手やチームに対して報告の上、謝罪。当該社員からは経緯を聴取し事実関係を調査。調査結果に基づいて会社規定に従い厳正な処分を与え、具体的な対策の公表は控えたが、再発防止策を徹底することを約束。

インスタを通じた情報漏洩事例

健康器具販売会社
【事例】インスタへの不正アクセスによるフィッシング詐欺。顧客の個人情報が第三者へ閲覧されている可能性を示唆。
【漏洩後】公式ホームページによる謝罪、注意喚起。旧アカウントの廃止し、新アカウントを作成。



SNSで起こる情報漏洩の5つ原因

今までの内容を参考に情報漏洩の原因について5つにまとめました。

原因①社員が企業の情報管理に対する認識が不十分

事例1:Aさんは、自社の新製品についての情報が秘密保持されているという意識がなく、友人との会話中にSNS上で新製品の詳細を話してしまった。

事例2:Bさんは、企業内の戦略会議の様子を「頑張っている」という意味でSNSに投稿したが、その中にはまだ公開されていない企業戦略の一部が映り込んでいた。

原因②:SNSの利用ガイドラインが存在しない、または社員に十分に理解されていない

事例1:Cさんは、自分のSNSの投稿によって会社に損害を与える可能性があるとは思わず、未発表の新製品の詳細を楽しげに投稿してしまった。

事例2:Dさんは、企業が定めているSNSの利用ガイドラインの存在を知らなかったため、業務中のエピソードを含む投稿をした。しかし、その投稿には顧客情報が含まれていた。

原因③:企業がSNSでの情報漏洩のリスクに対する教育やトレーニングを提供していない

事例1:Eさんは新入社員で、社内の情報をSNSに投稿してはいけないことを理解していなかった。その結果、試作品の画像をSNSにアップロードしてしまった。
事例2:Fさんは、SNSの投稿が社外にどれほどの影響を与えるか理解しておらず、社内での議論を公開してしまった。

原因④:社員が企業の業績や戦略に関する敏感な情報を投稿してしまう

事例1:Gさんは、大手企業とのパートナーシップを記念して、未公表の合意の詳細をSNSで投稿した。
事例2:Hさんは、内部向けの営業成績を自慢のためにSNSで公開してしまった。

原因⑤:社員が個人のSNSアカウントを適切に管理していない

事例1:Iさんは、パスワード管理を怠り、自身のSNSアカウントが不正アクセスされ、業務関連の情報が流出してしまった。
事例2:Jさんは、プライベートとビジネスを分けることなく一つのSNSアカウントを使用していた。その結果、ビジネス関連の情報が意図せず公開され、情報漏洩が発生してしまった。

以上のような事例からわかるように、SNSを通じた情報漏洩は、誤った認識や不適切な管理から生じる可能性が高いです。こうした事例を避けるためには、企業としても社員個々としても適切な対策が必要です。次に、従業員に求められる具体的な対策について説明します。

従業員へ求める5つの具体的対策

対策①:自社情報の取扱いについての認識を深める

1、社員全員が自社の情報管理について理解し、尊重する。情報漏洩の可能性がある情報を把握し、それらの情報をSNSに投稿しないよう自己管理を行う。
2、自社が提供するサービスや製品、企業戦略など、業務に関連する情報は業務外での公開を避ける。

対策②:SNSの使用に関するガイドラインを理解し遵守する

1、社員は企業のSNS使用に関するガイドラインを正確に理解し、それに従って行動する。不明な点があれば適切な部署や人物に確認する。
2、ガイドラインが更新された場合も速やかに確認し、最新のルールに従う。

対策③:情報漏洩のリスクについての教育を受け、理解する

1、企業は定期的に情報セキュリティに関する教育やトレーニングを実施する。社員はこれらの教育を真剣に受け、理解する。
2、情報漏洩のリスクについて自主的に学ぶ。自身の知識を更新し、常に最新の情報に基づいて行動する。

対策④:業務関連情報の投稿を控える

1、社員は業務に関連する情報をSNSに投稿しない。これには、会議の内容や取引先の情報、未公表の製品やサービスに関する情報などが含まれる。
2、業務関連の写真や動画も同様に投稿を控える。例えば、オフィス内の写真や業務用の書類、パソコンの画面等をSNSに投稿しない。

対策⑤:個人のSNSアカウントの適切な管理

  1. 1、自分のSNSアカウントのプライバシー設定を適切に管理する。誰に何を見せるのか、どのような情報を共有するのかを考慮する。
  2. 2、パスワードは定期的に変更し、二段階認証を設定するなど、アカウントのセキュリティを確保する。

まとめ

今日、私たちは様々なSNSを活用して、リアルタイムに情報を発信し、共有することが可能です。
しかし、その一方で、企業の機密情報がSNSを通じて意図せずに公開されるリスクも高まっています。それらの情報が悪意を持つ人々の手に渡ることで、企業の競争力を損なうだけでなく、法的な問題を引き起こす可能性もあります。
日本の企業における実例を挙げながら、私たちはSNSを通じた情報漏洩の原因とその対策について検討しました。
原因としては、社員の情報管理に対する認識の欠如、SNS利用ガイドラインの不理解、情報漏洩リスクに対する教育の不足、敏感な情報の不適切な投稿、個人アカウントの不適切な管理などがあります。
これらの原因に対抗するための具体的な対策としては、自社情報の取扱いについての認識を深めること、SNS利用ガイドラインの理解と遵守、情報漏洩リスクについての教育の受け入れ、業務関連情報の投稿を控えること、そして個人アカウントの適切な管理が必要です。それぞれが自分の行動一つ一つを見直すことで、企業全体としての情報漏洩リスクを最小限に抑えることができるはずです。