テレワークと体調不良の関係性:健全なテレワークのために企業ができることとは?
2023年07月03日
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テレワークの背景と普及
テレワーク(リモートワーク)というと最近できた様に思うかもしれませんが、その概念は、過去数十年にわたり逐次進化してきました。特に2020年の新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによりその普及が急加速しました。
時系列に見るテレワークの背景
1970年代:テレワークの概念は、オイルショックによるエネルギー危機と共に初めて提唱されました。人々がオフィスに通勤する代わりに、自宅で仕事をすることでエネルギー消費を減らすというアイディアが出されました。
1980年代〜1990年代:パーソナルコンピュータとインターネットの登場により、テレワークは技術的に可能となり、一部の企業で試験的に導入され始めました。
2000年代:高速インターネット、クラウド技術、ビデオ会議ツールなどの普及により、テレワークはさらに現実的な選択肢となり、一部の企業で柔軟な働き方として導入されました。
2010年代:デジタルノマドという概念が広まり、特定の場所に拘束されない働き方が一部のフリーランスやIT業界で人気となりました。
2020年代:新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが世界中に広がり、社会的距離を保つために自宅で働くテレワークが急速に普及しました。
テレワークが急速に普及した主な理由:
感染症対策:COVID-19のパンデミックは、オフィス内での集団感染を防ぐために企業にテレワークを推奨・導入させる強い動機となりました。
技術の進歩:高速インターネット、クラウドストレージ、ZOOM等のビデオ会議ツールなど、テレワークを可能にする技術が広く普及しました。
働き方改革:ワークライフバランスの向上や生産性の向上を目指す働き方改革の一環として、テレワークが企業に導入されることが増えました。
コスト削減:オフィススペースの維持管理や通勤費用などのコスト削減が可能となり、企業にとって経済的なメリットがあります。
従業員の幸福感向上:自宅や好きな場所で働けることで、従業員のワークライフバランスが向上し、仕事の満足度と生産性が上がる可能性があります。
人材獲得:地理的な制約がなくなることで、より広範な人材を採用できるようになります。
これらの理由により、テレワークは多くの企業と従業員にとって新たな働き方として定着し、その普及が進んでいます。しかし、それに伴い新たな問題も浮上してきており、その一つがテレワークによる体調不良です。
テレワークで懸念される体調不良について
テレワークの導入は、従業員に多くのメリットをもたらしますが、同時に新たな健康上の問題も引き起こします。具体的には、長時間の画面操作による目の疲労、不適切な作業環境と体の痛み、ストレスと精神的健康問題が主な問題となります。
①長時間の画面操作による目の疲労
オフィスでは、打ち合わせや昼休みなどの間に目を画面から離す機会がありますが、テレワークではそのようなブレイクタイムが少なくなる傾向にあります。これがデジタル眼精疲労(デジタルアイストレイン)を引き起こす一因となります。
②不適切な作業環境と体の痛み
オフィスでは、通常、適切なデスクとチェア、適切な照明、適切な画面の位置といったエルゴノミクスが考慮されています。しかし、家庭での作業環境では、これらが必ずしも満たされていない場合があります。これが背痛や肩こり、手首の痛みといった問題を引き起こす可能性があります。
③ストレスと精神的健康
テレワークでは、家庭生活と仕事生活の境界が曖昧になりがちです。これにより、仕事が終わらないというストレス、孤独感、適切な休息が取れないという問題が生じます。また、適切なコミュニケーションが取れないことから生じるストレスも無視できません。
次に、これらの問題を解決し、テレワーク中の自己ケアと体調管理の重要性について探ります。
体調管理の重要性:テレワーク中の自己ケア
テレワークにおける体調不良を防ぐためには、自己管理が重要です。自宅での仕事は、自分自身の体調を最適に保つ責任が増えることを意味します。適切な作業環境の設定、定期的な休憩の取り方、ストレス管理の方法など、テレワーク時の健康管理には様々な要素が含まれます。
以下に、テレワークにおける体調不良を予防するための具体的な方法を提案します。
①快適な作業空間を作る
テレワークでは、自分自身の身体に配慮した作業空間を作ることが大切です。まず、適切な椅子の選択も重要になってきます。椅子は身体のサポート役であり、長時間の作業をサポートします。背もたれがしっかりとした、高さ調節可能な椅子が最適です。座面にはクッションを追加することで、腰への負担を軽減することができます。パソコンの画面の位置も重要です。最適な配置は、画面の上部が目線より少し下の位置にくるように設置することです。これにより、首の位置を自然に保ちつつ視線を移動させることができ、首や肩への負担を軽減できます。
②休憩時間の設定と目の健康
長時間の画面作業は目への負担を増加させます。そのため、定期的に画面から目を離す休憩を設けることが重要です。「20-20-20ルール」は、20分ごとに20秒間、約6メートル先を見るという簡単なルールです。これにより、目の疲れを軽減することができます。
③運動と食事のバランス
精神的健康の維持:ストレス管理の重要性
テレワークでは、職場とプライベートの境界が曖昧になることから、仕事のストレスが家庭生活に影響を与える可能性があります。また、一人で働くことによる孤独感も無視できません。これらの問題に対処するためには、適切なストレス管理が不可欠です。
①仕事とプライベートの境界の設定
明確な作業時間を設け、作業時間外はリラクゼーションや趣味の時間を設けることで、仕事とプライベートの境界を確保します。これにより、仕事が終わらないというストレスを和らげることができます。
②コミュニケーションの確保
孤独感を和らげるためには、定期的なチームミーティングや一対一の会話の時間を設けることが有効です。また、同僚や上司との非公式なチャットも重要です。
③マインドフルネスとリラクゼーション
深呼吸、ヨガ、瞑想などのリラクゼーションテクニックは、ストレスを和らげ、心の健康を維持するのに役立ちます。
企業の役割:従業員の健康を支援するためのポリシーとプログラム
企業には、従業員の健康を守り、テレワークでの生産性を最大化するための重要な役割があります。企業が従業員の健康を維持するために実施できる具体的なポリシーとプログラムには以下のようなものがあります。
①健康的な作業環境の推奨
企業は従業員に対して、適切な作業環境を作る必要があります。これには、適切な家具の配置、適度な休憩時間の設定、良好な照明条件の確保などが含まれます。
②ウェルネスプログラムの提供
企業は健康とウェルネスのプログラムを提供し、従業員が自身の健康を管理するためのツールとリソースを手に入れられるようにします。
③定期的なコミュニケーション
定期的なチームミーティングや一対一の会話の時間を設けることで、孤独感を和らげ、メンタルヘルスを保つことができます。
④フレキシブルな勤務時間
従業員の個々のライフスタイルや必要性に合わせて、フレキシブルな勤務時間を設定します。これにより、従業員は仕事とプライベートのバランスを保つことができます。
⑤教育と研修
企業はテレワークにおける最良の健康習慣についての教育や研修を提供します。これにより、従業員は自分自身の健康を維持するための戦略を学ぶことができます。
まとめ:健康的なテレワークの生活のために
健康的なテレワーク生活を送るためには、身体的、精神的健康を維持し、生産性を高めるためのさまざまな戦略が必要となります。まず、適切な作業環境の整備が基本です。身体に負担をかけず、長時間の作業に耐えられるような家具の配置や、視疲労を防ぐための照明の調整などは重要です。また、定期的な休憩時間を設け、目の健康を保つことも大切です。さらに、適度な運動とバランスの良い食事を心がけることで、体調を良好に保つことが可能です。そして、仕事とプライベートの境界を確立し、適切なコミュニケーションを確保することで、テレワークによるストレスや孤独感を和らげます。企業もまた、健康的な作業環境の推奨、ウェルネスプログラムの提供、定期的なコミュニケーションの確保、フレキシブルな勤務時間の設定、教育と研修の提供などを通じて、従業員のテレワーク生活をサポートします。これら全てが組み合わさることで、健康的なテレワーク生活が実現され、生産性は低下することなく、むしろ向上することが期待できるでしょう。