炎上騒動・ステマ関連

CMが気持ち悪い?CM・広告制作における想定外の炎上を防ぐリスクヘッジとは

2023年08月31日

読了時間目安: 7分


「口臭が気になるからって舌までゴシゴシしてない?」

泡歯磨きのCMでマツコ・デラックスさんが言っているセリフです。

マツコ・デラックスさんと言えば、2023年7月にLINEリサーチが、一番好きなテレビ番組の「司会者・MCタレント」についての調査で、3位ダウンタンさん、2位明石家さんまさんを抜き、堂々の1位にランクした好感度タレントです。
(参照:Yahoo!ニュース「マツコ・デラックス、明石家さんま、ダウンタウン、千鳥…一番好きな「司会者・MCタレント」ランキング 1位は?)

しかし、そんな好感度タレントのマツコ・デラックスさんが出演するCMですら、
不快感を感じる人もいます。

CM制作側は、当然ですが視聴者に気持ち悪い印象を与えたいという意図はありません。

しかし、テレビの前には多くの視聴者が存在しており、捉え方は千差万別です。

今回はCMによる炎上を防ぐためのリスクヘッジについて、過去の炎上事例も含め、詳しくお伝えします。

炎上の定義とその影響

まずは炎上の定義とその影響についてお伝えします。インターネット時代、特にSNSの普及とともに、企業や個人の発信した内容が大きな批判を受ける現象が増えてきました。この現象を「炎上」と称します。炎上は、主にオンライン上での大量の批判や不満が一つのトピックに集中することを指します。多くの場合、SNSや掲示板、ブログなどのプラットフォーム上で発生します。原因となるのは、誤解を招く可能性のある情報発信、不適切な発言、不適切な広告やCMなど多岐にわたります。

炎上の影響は、主に2つに分けられます。
1つ目は、短期的な影響です。
炎上が発生した際、企業の公式なSNSアカウントや関連するハッシュタグなどが注目の的となります。これにより、一時的にウェブサイトへのアクセスが増えることが予想されます。また、一部の消費者はブランドの評価を下げ、購入意欲を失う可能性もあります。
2つ目は、長期的な影響です。
炎上はブランドの評価やイメージを長期にわたって悪化させるリスクがあります。特に、適切な対応が取られなかった場合や、再発するような事態が起こった場合、信頼の損失は深刻となることが考えられます。このような信頼の低下は、売上や利益の低下といった具体的な結果として表れる可能性があります。

炎上に適切に対処するためには、事前のリスクヘッジと、炎上が発生した場合の迅速な対応が求められます。

過去のCM炎上事例の解析

広告やCMは企業のブランドや製品を伝える効果的な手段ですが、時として視聴者との意見や感じ方のギャップから炎上を引き起こすことがあります。次に、過去の炎上事例を解析し、その原因と教訓についてお伝えします。

事例1:インスタントラーメンのCM

このCMでは、ユーモアとして「私作る人、ぼく食べる人」というキャッチコピーで作られたのですが、これが炎上。

このキャッチコピーが、「料理(調理)をするのは女性で、男は食ぺるだけ」というメッセージを伝えているとして男女差別を助長するという声につながりました。

事例2:医薬品のCM

このCMは登場する俳優がけだるい口調で,「世の中バカが多くて疲れません!?」とひと言つぶやくように語りかけるコマーシャルだった。

しかし、このCMに対して「視聴者に対してバカとは何事だ!」という苦情が寄せられた。
もちろん制作者としてはシャレで作ったのですが、そのシャレがどこまで通じるかという見誤りから炎上に発展したケースになります。

これらの事例から、メッセージや表現が多様な視聴者にどのように受け取られるかを常に意識することの重要性が分かります。また、SNSの普及により、炎上の情報が短時間で拡散する現代では、より慎重な判断が求められます。

CM制作時のリスク評価の方法

広告やCMの制作はクリエイティブなプロセスですが、その中にもリスクは潜んでいます。これらのリスクを最小限に抑えるための評価手法が求められています。以下、CM制作時にリスク評価を行う方法とその重要性についてお伝えします。

 

①ターゲットオーディエンスの洞察

制作するCMが意図するメッセージをしっかりと伝えられるか、また、様々な背景を持つ視聴者にどのように受け取られるかを前もって理解することが大切です。例えば、マーケットリサーチやフォーカスグループを活用して、様々な属性の視聴者の反応を事前に把握する方法が考えられます。

②多様性を持つ意見を取り入れる

CM制作チーム内に様々なバックグラウンドや視点を持つメンバーを取り入れることで、潜在的なリスクを早期に察知し、適切な対応策を練ることができます。

③外部の専門家やコンサルタントの意見を求める

特定の文化やコミュニティに関する深い知識を持つ専門家からのフィードバックは、CMが不適切な表現をしていないか、または誤解を招く可能性がないかを確認するのに役立ちます。

④モニタリング

完成したCMを限られた視聴者に先行公開し、その反応をモニタリングすることで、炎上のリスクを事前に検知することも可能です。これにより、公開前に問題点を修正する余地を確保できます。

以上のような方法を取り入れることで、CMの炎上リスクを低減させることが期待できます。ただし、リスクを完全にゼロにすることは難しいため、万が一の炎上が発生した場合の対応策も考えておくことが重要です。



SNSの時代における炎上の拡大とその対応

SNSの時代とも言える現代において、情報は瞬時に広まり、特に批判的な声や不満が拡散されるスピードは非常に高速です。

この背景のもと、CMや広告の炎上はかつてない速さで大きな規模になることが増えてきました。以下、SNSを中心とした炎上の拡大のメカニズムと、その対応策についてお伝えします。

炎上の拡大のメカニズム

①情報の即時性とアクセスの手軽さ
一つの投稿がシェアされ、それがさらにシェアされることで、短時間内に数十万、数百万人に到達することも珍しくありません。

②SNS上でのアノニマス(匿名)性
匿名性は、人々が率直な意見や感情をオープンにすることを容易にしています。これにより、否定的な意見や批判がエスカレートしやすい環境が形成されています。

炎上が発生した場合の対応

①迅速な情報収集
炎上の原因や批判の主な内容を正確に把握することで、適切な対応策を考える土台となります。

②公式な声明や謝罪
公式な声明や謝罪を通じて、企業の考えや立場を明確にすることが求められます。ここでの誠実な対応が、炎上の収束を早める要因となることが多いです。

③企業やブランドのコミュニケーション戦略の見直し
炎上の原因を真摯に受け止め、長期的な観点から、今後の広告やCM制作に活かすことで、再発防止策を構築することが重要です。

結論として、SNSの拡散力は炎上を大きくする要因となりえますが、それと同時に適切な対応が求められる時代とも言えます。企業や広告制作者は、この新しいコミュニケーションの時代のリスクとチャンスを理解し、戦略を組み立てることが必要です。

リスクヘッジとしての事前リサーチの活用

広告やCMが炎上するリスクを最小限にするためには、リリース前に十分なリサーチが必要です。この事前リサーチは、制作物が持つ潜在的なリスクを特定し、それに対する対策を講じるためのものです。

事前リサーチとして最も一般的なのは、ターゲットとなる視聴者層に対するフォーカスグループインタビューです。これは、一定数の人々を集め、CMや広告のプロトタイプを鑑賞させ、その感想や意見を直接収集する方法です。

こうした直接のフィードバックは、広告が意図しない印象を持つ可能性や、視聴者の感じる不快感を予測する上で非常に有効です。

また、オンライン上でのアンケート調査も効果的な手段となります。特に、広範な地域や年齢層を対象としたい場合、アンケートは迅速に大量のデータを収集することができます。

このようなリサーチを通じて収集されたデータをもとに、広告やCMの内容を調整することで、炎上リスクの低減が期待されます。実際にリサーチ結果を元に修正を加えることで、多くの企業や広告代理店は大きなトラブルを未然に防いでいます。

しかしながら、リサーチは100%の安全を保証するものではありません。完璧なリスクヘッジは難しいという認識を持ちつつ、常に最新の市場トレンドや視聴者の感じる価値観をリサーチとして取り入れることが、持続的なブランド価値を維持するための鍵となるでしょう。

まとめ

CMや広告の炎上は、現代のSNS時代において、企業やブランドにとって避けて通れないリスクの一つとなっています。

この背景には、情報の拡散が早まるSNS時代の特性が影響しています。炎上は一度起こると、そのブランドのイメージに大きなダメージを与える可能性が高いため、事前の予防策が不可欠です。

その予防策の中心にあるのが、適切な事前リサーチです。ターゲット層へのフォーカスグループインタビューやオンラインアンケートは、広告やCMが持つ潜在的なリスクを早期にキャッチする上で非常に有効です。

これらのリサーチを通して収集されたフィードバックに基づき、広告の内容やメッセージを調整することで、不必要なリスクを軽減することが期待されます。

しかしながら、いかにリサーチを重ねても、炎上のリスクを完全になくすことは難しいというのが現実です。そのため、企業や広告制作者はリサーチだけでなく、炎上が発生した際の迅速な対応策を練ることも同時に考慮しなければなりません。

時代の変化や視聴者の感じる価値観を常にキャッチアップし、それを広告戦略に反映させることが必要です。

また、持続的なブランド価値の維持と向上のためには、過去の事例から学び、リスクヘッジをしつつ、変化を恐れず、新しい取り組みを進めるという難しいバランスが求められるでしょう。