sns 炎上対策

言葉の力と炎上対策~現代における表現のリスク管理~(1)

2024年12月28日

読了時間目安: 4分


SNS時代では、「言葉ひとつ」で炎上が発生することがあります。特に企業が情報発信を行う際、思想や信条、ジェンダーに関する言葉や表現には細心の注意が必要です。言葉選びのリスクとその対策について、2回にわたり考察します。

商品名の選定による炎上リスク

商品名が原因で企業が炎上するケースとしては、2021年の某コンビニ運営会社の「お母さん食堂」に関する炎上騒動が思い出されます。「お母さん食堂」という名称に対し「母親=料理」という偏見を助長するとの批判が向けられたこの事例に、驚かれた危機管理担当者も多いと思います。人目に触れる機会の多い名称は意図せぬ誤解を招くことがあり、言葉の選定は慎重に行う必要があります。

褒め言葉が招いた議論

「才色兼備(さいしょくけんび)」という言葉があります。一般的には「褒め言葉」として使われることが多いです。しかし、ある芸能人がXの投稿で女性芸能人を「才色兼備」と形容したところ、小規模な炎上状態になりました。「女性を褒める際に『才色兼備』という言葉を使うことはルッキズムを助長する」と批判の声があがったのです。投稿主は純粋にその女性芸能人の素晴らしさを褒める意図で、この表現をXに投稿しました。XというSNSの文字数制限もあり、4文字で表現可能なこの言葉を用いたようです。

この騒動は、「何がおかしいのか」と投稿を肯定する派と、「ルッキズムを助長する」と投稿を否定する派の議論に発展し、投稿主や女性芸能人の容姿も含めた論争(中傷を伴う炎上)へとつながりました。公共の場での発言や投稿に慎重さが求められることを再認識させられる事例です。情報発信の安全策を取るならば、「才能のある俳優(方)」など性差に関係ない表現の仕様が求められます。

誠実さと誤解のジレンマ

謝罪会見では表現がよりシビアになります。

ある謝罪会見では、開発担当役員が「可能性は否定できない。ゼロではない」と発言しました。この発言は「○○を引き起こした原因は××ではないか?」という質問に対するものでした。実際、この時点ではまだ検証結果が出ておらず、「原因かもしれないし、そうではないかもしれない不確かな状況」でした。開発関係者には「不確かな状況での断言を避ける」傾向があります。そこで、「可能性を含めて」発言されましたが、理系のエンジニアリング的な思考や言い回しが、メディア担当者には十分に理解されないケースがあります。その結果、TVや翌日の新聞には「原因は××の可能性が高い」「原因は××だ」といったニュアンスの見出しが多く掲載されました。結果として原因は別だったものの、会社は記事に振り回され、メディア側は誤報に近い状況となり、お互いにとって不幸な事案となりました。

このような場合の正しい対応は「現在検証中で、正確なことを申し上げられないので回答を控えさせていただく」と答えることで、何度追及されてもそのスタンスを貫くことが必要です。この会見で印象的だったのは、誠実な対応が誤解を生んでしまった点です。開発担当役員は、原因と言われた××の性質や要因、発生可能性について丁寧に説明した上で「可能性は排除できない」と発言しています。開発責任者として、またエンジニアとして誠実な対応でしたが、受け取る側によって異なる解釈を生む可能性があることを前提に情報発信を行うことが、ますます重要な時代になっていることを再認識する必要があります。