炎上動向調査マンスリーレポート

炎上動向調査マンスリーレポート 2021年8月号

2021年11月05日



コラム概要

①8月はDaiGo氏の差別発言問題が2週連続で上位に。そのほかでは河村市長メダル噛み事案が上位
②YouTuberやインフルエンサーを広告に使う場合は2点の事前確認でチェックすることでリスク軽減
③炎上の早期沈静化するためには、常時ネット監視を行い、初動における対応マニュアルを作成すること


2ちゃんねる、Twitter、個人ブログより抽出
(Twitterデータは10分の1のサンプリングデータ)


企業のソーシャルリスク対策の全般を支援するリリーフサインでは、「炎上」というキーワードを元にして、どのような内容がSNSで言及されたのかを調査しています。


2021年8月の炎上トレンドは、①メンタリストDaiGo氏の差別発言、②名古屋市の河村市長メダルかじり炎上、③旭川いじめ自殺事件の行政に対する炎上に関する投稿が多い結果となりました。 炎上に関する投稿者の属性をみると「男性75%、女性25%」。また、2ちゃんねるの投稿が全体の75%となりました。その中でも今回はワイドショーをはじめ、テレビ報道でも放送されました「DaiGo氏の差別発言」の事案について、企業にとってどのように影響したのかを考察していきたいと思います。


DaiGo氏の問題発言に関する投稿数の推移と分析

この炎上の始まりは、DaiGo氏のライブ配信「【超辛口】科学的にバッサリ斬られたい人のための質疑応答(8月7日)」の中での発言からでした。7日の発言した際には掲示板サイト「2ちゃんねる(5ちゃんねる)」での数件の投稿に過ぎません。その後「2ちゃんねるのスレッド」が立ち、まとめサイト、Twitterへと当該動画が拡散していきました。
その拡散を受けた動画(8月12日)では、DaiGo氏は謝罪せず、今回の差別発言について開き直りとも取れる発言をしてしまいます。これにより非難が加速していきました。その後、1回目の謝罪動画を公開(8月13日)しますが、事態は収拾しません。その翌日(8月14日)に2回目の謝罪動画の公開を最後に、9月13日時点でも新しい動画は公開されず、更新は止まっています。今回のDaiGo氏の差別発言による炎上に関しては、Twitter、2ちゃんねる、個人ブログ等の投稿については男性が約70%を占めています。また、炎上に対する投稿の80%以上が2ちゃんねるへの書き込みでした。

炎上した背景とスポンサー企業への影響

この炎上の要因は、「人の命に優劣をつけ、価値のない命は抹殺してもかまわない」という、ホームレスや生活保護受給者の命を軽んじているような発言の内容です。批判が殺到した結果、騒動になりました。その後の動画でも、DaiGo氏は謝罪を求める声に対しても、「これは別に個人の意見じゃないですか、それに対して謝罪っていうのは別に」といった拒否感を示すことで、さらに炎上する事態となりました。

DaiGo氏はメンタルに関する多くの書籍を出版し、YouTubeチャンネルの登録者数は約245万人を誇っています。『D-Lab』という有料制のオンラインも運営、こちらも若者に人気があり、熱狂的なファンが多くいます。DaiGo氏を広告に起用している企業は、今回の炎上を受けて出演CMと広告起用の自粛を発表する事態となりました。実、DaiGo氏を広告起用していた企業では、2020年からホームレスに対して支援を行っていた企業で、スポンサー企業のやっていた活動に対して、DaiGo氏の言動は相反するものでした。この企業も、まさかDaiGo氏が炎上するとは想定していません。問合せへの対応などの事後対応に追われ、また同社で起用している別のタレントにも悪影響がでる恐れもありました。

芸能人だけではない!YouTuber・インフルエンサーでの企業炎上を防ぐために

DaiGo氏と同じように有力なYouTuber・インフルエンサーに広告起用を依頼している企業は年々増加しています。株式会社サイバー・バズの2020年に実施した調査によると、インフルエンサー・マーケティングの2019年の市場規模は約300億円で、2025年には2019年比約2.4倍の723億円規模になると言われています(資料1)。今後、インフルエンサーが企業のマーケティング活動に用いられる中で、炎上リスク軽減するために抑えるべき重要なポイントが、①投稿内容の事前確認と②炎上時に備える体制づくりの2点あります。それぞれ詳しく解説していきましょう。

まず、①投稿内容の事前確認については、以下に該当しない場合は注意が必要です。

☑政治、宗教、人種、ヘイトなどに関する投稿をしていない

☑SNS投稿に対してコメント数が多く、好意的なものが多い

事前確認の1つ目として、政治、宗教、人種、ヘイトなどに関する投稿をしていないかチェックします。政治や宗教のような対立しやすいテーマについては正解・不正解もなく、個人によって考え方が異なります。例えば、政権批判や政権寄りの投稿が多い場合、スポンサー企業にも政治色がついてしまいます。過激発言や問題発言がなくても、反対派による不買運動や、ネット上で企業側もバッシングを受ける恐れがあります。他にも、特定のプロ野球チームの応援する投稿や、他チームを煽る投稿が多い場合は、対立しやすく炎上しやすいので危険です。また近年では、ヴィーガンで肉食に批判的な投稿をしている投稿や、ヴィーガンを否定する投稿が多い場合にも、対立を生みやく炎上するリスクが高いです。

2つ目に、投稿に対してコメント数が多く、好意的なものが多いかチェックします。コメントが多く、その内容が好意的なものが多ければ問題ありません。一方、批判的なコメントが多い場合、投稿者のアンチユーザーがフォローしており、少しでも問題発言をすると、揚げ足をとられ炎上し、企業へも批判が集まる危険があります。また、フォローワーに対してコメント数が少ない場合にも注意が必要です。フォローワーを買っている可能性があり、広告起用しても思ったような宣伝効果がない可能性が高いので避けたほうがいいでしょう。

上記の2つの事前確認をやっても、炎上してしまう可能性を0にすることは非常に難しいのが現状です。そこで、企業において、炎上時に備える体制づくりが重要となります。もし炎上が発生してしまった時のために、早期発見と、炎上の沈静化に向けて「いつまでに」、「だれが」、「どのように対応するか」を社内で事前に決めておきます。炎上を早期発見できる仕組みとして、例えば、ネット投稿監視と、発生した場合の対応マニュアル作成し、そのマニュアル通り迅速に動くために炎上時の訓練までするとよいでしょう。

YouTuber・インフルエンサーを広告起用と同時にやるべきこと

今回紹介したDaiGo氏の炎上事案では、過去にも何回か波紋を広げる投稿をしています。例えば、2019年10月の台風19号の際、一部の避難所のペット受け入れ拒否に批判する投稿をした際に、ホームレスの避難所受け入れ拒否問題を引き合いに出しました。さらに、2020年10月にはTwitterで税金の使い方を巡る発言で炎上もしており、過去の発言が今回の差別発言にも繋がっていると推測でき、スポンサー企業は、起用前に調査すれば、炎上による被害を防ぐことができたかもしれません。

今回の場合、発言から炎上までに2~3日ありましたので、炎上で広がる前に問題発言の感知・把握・分析ができて先手を打つことができたと考えます。炎上事案が発生した場合、初動での迅速な対応が重要です。問題投稿が出た時に、投稿を常時ネット監視すれば、早期発見、投稿の事実確認、マスコミや取引先、株主への問合せ対応作成、釈明文の掲載などの対応が可能となります。ただ、就業時間以外も投稿を追うことは現実的でなく早期発見が難しい場合がほとんどです。

そこで、弊社ではネット監視のパイオニアとしてのノウハウを活かし、就業時間以外も24時間365日のシステムと有人によるネット監視をおこなっています。また、上場企業からベンチャー企業など、業界問わず炎上が発生した場合の運用マニュアル作成の実績も多数あるので、この機会に見直しを含めて、弊社のような専門家へご相談することをお勧めします。また予防策としてリスク分析や研修を行うことも有効です。

YouTuberやインフルエンサーなどによる宣伝力は、上手く活用すれば、企業イメージの向上や新しい顧客を獲得できるチャンスが生まれます。その反面、炎上リスクも持っています。炎上による悪影響は、企業のイメージダウンにつながり、取引先や株主などにも被害が出る恐れがあります。いわば「諸刃の剣」と言えるかもしれません。ぜひ一度、この機会にリスクの部分にも視点を向け、炎上対策の運用体制の見直しと危機への備えを考えてみてはいかがでしょうか。