炎上動向調査マンスリーレポート

炎上動向調査マンスリーレポート 2022年3月号

2022年03月15日


2ちゃんねる、Twitter、個人ブログより抽出
(Twitterデータは10分の1のサンプリングデータ)
2022年2月の「炎上」した案件について振り返ります。主な炎上案件として、「古塔つみ氏トレパク疑惑騒動」、「プロゲーマーたぬかな氏差別発言問題」、「乳がん検診啓発ポスター表現に物議」などが発生しました。
実は、炎上事例として挙げた「乳がん検診啓発ポスター」のように、ポスターが思わぬことでネット炎上してしまったというケースはよくあります。近年発生した事例でいうと、「献血推進ポスター表現がセクハラだと物議(2019年)」「自治体とアニメがコラボした町おこしポスターの不適切問題(2015年)」などがありました。
時間や労力をかけて作成したポスターがネット炎上しないためにどうすればよかったのでしょうか。2月に起こった「乳がん検診啓発ポスター」(以下、本件といいます)をもとに原因と対策について整理していきましょう。

なぜ炎上してしまったのか

本件は、第17回デザイン大賞のポスター部門グランプリに選ばれた作品です。乳がん検診の啓発のためにクリエイティブな力で受診を呼びかけるという目的で企画されたものでした。日本対がん協会、朝日新聞などが主催し、厚生労働省、日本医師会も後援として名を連ねています。
本件のデザインは、福引きで使用するガラガラ抽選器と受け皿にピンクの玉が転がっているデザインで、作者は以下のようにコメントしました。「何気なく参加した商店街の福引きで当たりが出た時の『まさか」という情景を思い描き、胸に見立てたガラガラ抽選器をデザインしました。何でもないような日常の中に『まさか」が隠れているかもしれないことを伝え、多くの人が乳がん検診を意識するきっかけになればと願っています。」(引用)と述べています。
しかし、本件では、当事者やその家族への配慮が足りないなどの批判を集めてしまいました。Twitterや2ちゃんねるのコメントで「グランプリになった経緯、その審査観点に違和感」「福引とがん告知は逆」「乳がんになったとき、福引きにあたった気持ちにはならなかった」という書き込みもありました。
本来当たったら嬉しい福引きの当たりを、乳がんになってしまうことと表現している部分に、患者やその家族の立場から見ると不快な気持ちになるのではないでしょうか。

どうすれば防げたのか?

本件の審査過程では、患者会などの意見を聞く機会を設けた5段階の審査があり、コピーライターら6名で最終審査をおこないました。患者会の意見を聞く機会もありながらも、批判が集まってしまいました。もしかすると、クリエイティブ性を重視した選考で、5段階の審査でも炎上してしまうのは、組織内でのチェック機能不足かもしれません。以下は、ネット炎上を防ぐためにチェックしてほしい4項目です。

①性別、人種、宗教、国籍、政治思想など偏見に基づいた主張になっていませんか?
②人権に反する内容ではありませんか?
③性的な印象や表現が強すぎていませんか?
④ローンチするタイミングや場所は適切ですか?

上記を確認した上で、このポスターを見て不快に思う人がいないかどうか想像することが、ネット炎上を防ぐために重要です。それらを想像する力を身に付けるためにネット炎上リテラシーも必要となります。弊社では定期的に無料セミナー、有料での企業研修も実施していますので、是非ご活用ください。

また、万が一に備えてローンチ前に制作意図などの回答文を用意してネガティブな対応に備えておくことも重要です。広告内容も弊社コンサルタントのチェックをおこないますが、回答文の監修も可能です。ご気軽にご相談ください。

まとめ

本件ポスターの、多くの方に乳がん検診の大切さを伝え、命を救っていきたいという啓蒙の意図は素晴らしいものです。しかし、治療中の方の中には、がんになったことを自分のせいだと悩み苦しんでいる人もいます。そのような方々がいる中で、がんになることを福引きの当たり・はずれに例えた表現をグランプリとすることは、一考の余地があったと考えます。

ポスターを含め広告活動はクリエイティブでインパクトを求めがちですが、広告の先にいる受け手の気持ちを想像するネット炎上リテラシーがあれば防げたかもしれません。広告を出す際は、一度、不快な思いをする人がいないか考えてみることをおすすめします。